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天井は、高くなくていい。

こんにちは、高谷です。

家づくりをしていると、
「天井は高いほうがいい」
そんなイメージを持たれている方は少なくありません。

たしかに、天井が高い空間には、わかりやすい開放感があります。
吹き抜けや大空間には、それだけで人を惹きつける力があります。

でも私は、いつも思います。
天井の高さは、単純に“高ければ良い”ものではないと。

今回の写真の空間も、決して天井が高いわけではありません。
むしろ一般的な住宅の感覚からすると、抑えめです。
この居場所も、およそ2100ほど。
勾配天井ではあるけれど、体感としては低く、包まれるような落ち着きがあります。

この“少し低い”が、実はすごくいいんです。

低い天井には、まず安心感があります。
人は広さだけで心地よさを感じるわけではありません。
どれだけ身体が守られているか、どれだけ落ち着いていられるか。
そういう感覚が、空間の質を大きく左右します。

天井が抑えられていると、空間はどこか静かになります。
読書をする。
考え事をする。
窓の外を眺めながらぼんやりする。
そんな時間にちょうどいい居場所になる。

写真のように、正面の窓へ視線が抜けていると、空間自体はこもりすぎません。
身体は包まれながら、視線は外へひらく。
このバランスが、とても心地いいのだと思います。

さらに、天井を必要以上に高くしないことは、温熱環境の面でも合理的です。

空間の容積が大きくなれば、そのぶん冷暖房で整える空気の量も増えます。
だから、天井をむやみに高くしないことは、空気までちょうどよく保ちやすい、ということでもあります。

冬は暖かさが過剰に上へ逃げにくい。
夏は冷やした空気が間延びしにくい。
家全体の空調計画も、無理が少なくなります。

つまり、低さは単なるデザインではなく、暮らしの快適さにもつながっているんです。

そして、私がもうひとつ大事だと思っているのが、外観への影響です。

天井を抑えると、家そのものの高さも抑えられます。
すると、外観の重心が低くなる。
この“重心の低さ”は、家をとても美しく見せてくれます。

家は高くそびえるほど立派に見える、という考え方もありますが、
私はむしろ、低く構えた家のほうが品があると思っています。

どっしりとしていて、無理がない。
周囲の風景に対しても威圧感が少なく、自然に馴染む。
そして何より、落ち着いて見える。

この低さがあることで、二階建てであっても、平屋のような佇まいに近づけることがあります。
実際、軒のラインや屋根のかかり方、全体のプロポーション次第では、
外から見たときに“平屋のような低く美しい家”として見せることができます。

これはかなり大きな魅力です。

平屋には、多くの人が憧れます。
伸びやかで、穏やかで、地面に近い。
あの落ち着いた雰囲気は、やはり独特です。

でも、敷地条件や必要な床面積によっては、どうしても二階建てになることもある。
そんなときでも、内部の天井高さや断面構成を丁寧に整えることで、
外観の印象をできるだけ低く抑え、平屋のような安定感をつくることができます。

これは単なる見た目の話ではありません。
家の重心が低く見えると、住まい全体に安心感が生まれます。
軽やかすぎず、騒がしすぎず、静かにそこにある感じ。
私はその佇まいが、とても好きです。

また、天井が低めだからこそ、素材も近くに感じられます。

壁の質感。
木のカウンターの手触り。
勾配天井の陰影。
窓から入る光の濃淡。

高すぎる天井では遠くへ逃げてしまうものが、
抑えられた高さの中では、ちゃんと身体の近くにとどまってくれる。
素材が背景ではなく、空間そのものとして感じられるんです。

トップの写真も印象的です。
低めに抑えられた通路の先に、小さな居場所が見える。
天井は高くない。
でも、その抑えた高さがあるからこそ、奥の光が効いてくる。
圧縮された空間の先に、静かな抜けがある。
この対比が、空間を豊かにしています。

家づくりは、つい「広く」「高く」「大きく」を目指しがちです。
でも、本当に豊かな家は、ただ大きい家ではありません。

落ち着けること。
安心できること。
光がきれいに入ること。
外観が美しく見えること。
風景に対して、無理なく佇むこと。

そういうことの積み重ねで、住まいの質は決まっていくのだと思います。

天井は、高くなくていい。
むしろ、低いからこそ得られる豊かさがあります。

空間に落ち着きが生まれる。
冷暖房の効率が整いやすい。
素材が近く感じられる。
そして外観は低く、美しく、重心の落ち着いた家になる。
場合によっては、二階建てでも平屋のような穏やかな佇まいをつくることもできる。

派手さではなく、深さ。
広さではなく、心地よさ。
そういう価値を、これからの家づくりではもっと大切にしていきたいと思っています。